Director's Statement

それは小川さんの創った主人公たちを疑うことから始まった。

小川洋子さんの小説『ホテル・アイリス』はとても簡素な言葉で書かれていますが、読めば読むほど謎が深まっていく恐ろしい小説です。容易に得られるものは何もありません。教訓やら共感やら感動やらといったもののことです。何度か読んでいるとすべてが疑わしく思えてきます。最初に「翻訳家」という男を疑いました。翻訳中の小説についてマリに語ったりしていますが、本当に翻訳などしているのでしょうか。死んだ妻の話、甥の話、疑いだすとキリがありません。そのうち男の存在自体を疑いはじめました。小川さん自身、さまざまなところで述べられているように、小川さんの小説には『アンネの日記』からの影響が強く感じとれます。もしかするとこの男はマリの想像の産物なのではないか。マリは自分の想像力で囲いを越えようとしているのではないか。これはなかなか有力そうな説に思えました。しかし、そうすると今度はマリの存在を疑ってみたくなります。本当のマリは別な世界にいて、この物語全体が彼女の想像なのではないか。あるいは存在するのは翻訳家で、マリは物語を通して具現化した翻訳家自身の分身なのではないか。そんな読み方もできなくはありません。小説には出てきませんが、「鏡の中の鏡」というモチーフはそんなふうにして導きだされたものです。あと、マリがマリーに宛てて書く手紙形式の日記も小説には出てきません。勝手なつけ足しをしてしまって小川さんと小川さんの小説の読者の皆様に対しては申し訳ない気持ちもありますが、そんな経緯があってのこととご理解いただければ嬉しいです。ともかく映画化にあたり、異論もあるでしょうが、極力原作が持つ魅力を損なわないように努めたつもりです。

準備から完成まで4年近くかかってしまいましたが、とうとう公開までこぎつけました。『ホテルアイリス』が1人でも多くの観客に届くようご協力いただければ幸いです。どうもありがとうございました。

奥原 浩志Hiroshi Okuhara

Introduction

小川洋子禁断の小説を、気鋭の映画作家が圧倒的な映像美で遂に映画化!

名も知らぬ、どこか涯ての島に在る、小さな海沿いのホテル。

謎めいた中年男と心に闇を抱えた若い娘。

出会ってはならない2人は、いつしか愛と死の香りに満ちた濃密な時間の淵に堕ちていく…

ロッテルダムや釜山などの国際映画祭で受賞歴のある『黒四角』の奥原浩志監督最新作。小川洋子が禁断のエロスを描写した同名小説を、舞台を台湾の架空の島に変え大胆に映画化。

センシャルな2人の世界を演じきった永瀬正敏、台湾の新人女優・陸夏(ルシア)に加え、菜葉菜、寛一郎、リー・カンションら日台の国際的な俳優たちによる演技のアンサンブルは必見だ。

誰がどうして、“ホテル・アイリス”などという妙な名前をつけたのか、私はいつも不思議に思う。
このあたりのホテルにはみな、海にちなんだ名前が付けられている。
なのにここだけがアイリスだ。(原作より)

Synopsis

寂れた海沿いのリゾート地─そこで日本人の母親が経営するホテル・アイリスを手伝っているマリは、ある日階上で響き渡る女の悲鳴を聞く。赤いキャミソールのその女は、男の罵声と暴力から逃れようと取り乱している。マリは茫然自失で、ただならぬその状況を静観している。一方で、男の振る舞いに激しく惹かれているもう一人の自分がいて、無意識の中の何かが覚醒していくことにも気づき始めていた。

男は、ロシア文学の翻訳家で、小舟で少し渡った孤島で独りで暮らしているという。住人たちは、彼が過去に起きた殺人事件の真犯人ではないかと、まことしやかに噂した。またマリも、台湾人の父親が不慮の事故死を遂げた過去を持ち、そのオブセッションから立ち直れずにいた。

男とマリの奇妙な巡り合わせは、二人の人生を大きく揺さぶり始める。

Cast

翻訳家
永瀬 正敏
Masatoshi Nagase

1966年生まれ、宮崎県出身。1983年、映画『ションベン・ライダー』でデビュー。『息子』(91)で日本アカデミー賞新人俳優賞・最優秀助演男優賞他、計の8つの国内映画賞を受賞。その後日本アカデミー賞は、優秀主演男優賞1回、優秀助演男優賞2回受賞。 海外作品にも多数出演しカンヌ国際映画祭・最優秀芸術貢献賞『ミステリー・トレイン』(89)、ロカルノ国際映画祭・グランプリ『オータム・ムーン』(91)、リミニ国際映画祭グランプリ、トリノ映画祭審査員特別賞『コールド・フィーバー』(95)では主演を努めた。台湾映画『KANO』(15)では、金馬奨で中華圏以外の俳優で初めて主演男優賞にノミネートされ、『あん』(15)、『パターソン』(16)、『光』(17)でカンヌ国際映画祭に3年連続で公式選出された初のアジア人俳優となった。近作は『赤い雪』(19)、『ある船頭の話』(19)、『最初の晩餐』(19)、『カツベン!』(19)、『ファンシー』(20)『星の子』(20)『名も無い日』(21)『茜色に焼かれる』(21)他。2018年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

マリ
ルシア | 陸夏
Lucia

台湾版ELLEなどの雑誌モデル、セブンイレブンなどのCM出演を経て、本作で主演に抜擢、映画デビューとなった。
2021年台北映画祭では超新人賞の10人の1人に選出。台湾のスキンケアブランド「SHER」のプロモーションキャンペーンでは、李景天、エイミー・ルイ、周農、呉佩寧、范逸飛などの女性アーティスト7人の女性の中に選ばれ、最終的には彼女がメインアンバサダーに選ばれるなど、大きな注目を集めている。
因みに地元のメディアの中には、彼女が台湾の小松菜奈だと表現することも少なくない。
映画出演作品に『ホテルアイリス』(21)、「Echo(高山上的熱氣球)」(21)。

母親
菜 葉 菜
Nahana

2015年初主演映画『YUMENO』監督/鎌田義孝で本格的デビューし、その強烈な個性で脚光を浴びる。以後映画を中心に活躍する。主な出演作品に『ヘヴンズ、ストーリー』(10)、『64 ー前後編』(16)、『ナルミヤ雑貨店の奇跡』(17)、『赤い雪』(19)、『モルエラニの霧の中』(21)、『夕方のおともだち』(22)、『ノイズ』(22)など多数。

寛一郎
Kanichiro

2018年公開の映画「菊とギロチン」監督/瀬々敬久で鮮烈にデビュー。主な出演映画は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『心が叫びたがってるんだ。』(17)、『チワワちゃん』(19)、『劇場』(20)、『泣く子はいねえが』(20)。

父親
マー・ジーシャン | 馬志翔
Chih-Hsiang Ma

1978年3月1日、花蓮生まれ。中国文化大学卒業。大学卒業後の2000年より、俳優としてのキャリアをスタート。2011年の『セデック・バレ』では、実在の親日派の台湾原住民のタイモ・ワリスを演じて大きな注目を集める。2014年、永瀬正敏主演の野球映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』で監督としてもデビュー。これは『セデック・バレ』のウェイ・ダーション監督の強いリクエストによるもので、起用の理由は野球に詳しいということと、短編映画で実績が評価されていたためとされている。最新作の「聽見歌 再唱 (Listen Before You Sing)」では、台北映画祭の主演男優賞を受賞している。主な出演作品に『20.30.40の恋』(04)、『囧男孩』(08)、『セデック・バレ』(11)、『百日告別』(15)、『聽見歌 再唱』(12)。監督作品に『KANO 1931海の向こうの甲子園』(14)。

売店の男
リー・カンション | 李 康生
Lee Kang-sheng

1968年10月21日に台湾の台北で生まれ、河南省出身。俳優・監督・脚本家。
1991年にツァイ・ミンリャン監督の長編映画「小孩」で俳優デビュー。1992年にツァイ・ミンリャン監督が彼のイメージをもとに映画『青春神話』を脚本・監督して以来、リーはツァイ・ミンリャン監督のすべての作品に参加している。1994年には映画『愛情萬歳』で第31回台湾映画金馬奨の最優秀男優賞にノミネートされた。 2003年長編デビュー作『迷子』を脚本・監督し、韓国の釜山映画祭で最優秀アジア新人監督賞、第4回中国映画メディア大賞で最優秀新人監督賞、アテネ国際映画祭で最優秀監督賞、オランダのロッテルダム国際映画祭でゴールデン・タイガー賞を受賞した。
2006年、脚本・監督を務めた映画『ヘルピ・ミー・エロス』は、釜山映画祭で釜山大賞を受賞し、2007年の第64回ヴェネツィア国際映画祭の公式コンペティションに選出された。 2013年、『郊遊 ピクニック』で第50回台湾金馬奨の最優秀男優賞、第56回アジア太平洋映画祭の最優秀男優賞を受賞した。
『郊遊 ピクニック』を最後に商業映画からの引退を示唆していたツァイ・ミンリャンが7年ぶりに『日子』(Days)を発表。リーも当然主演俳優として参加している。主な出演作品に『青春神話』(92)、『愛情萬歳』(94)、『河』(97)、『Hole-洞』(98)、『ふたつの時、ふたりの時間』(01)、『楽日』(03)、『西瓜』(05)、『黒い瞳のオペラ』(06)、『ヴィサージュ』(09)、『郊遊 ピクニック』(13)、『あなたの顔』(19)、『日子』(20)、『COME & GO カム・アンド・ゴー』(20)、『ホテルアイリス』(21)。監督作品に『迷子』(03)- 兼脚本、『ヘルプ・ミー・エロス』(07)- 兼脚本・主演、『台北24時「Remembrance」』(09)- 兼脚本。

Staff

監督・脚色・プロデューサー
奥原 浩志
Hiroshi Okuhara

1968年生まれ。『ピクニック』がPFFアワード1993で観客賞とキャスティング賞を、『砂漠の民カザック』がPFFアワード1994で録音賞を受賞。99年に製作された『タイムレス・メロディ』では釜山国際映画祭グランプリを受賞した。その後『波』(01)でロッテルダム国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞するなど、高い評価を受ける。その他の作品に『青い車』(04)、『16 [jyu-roku]』(07)、『黒四角』(12) がある。本作品は9年ぶりの新作。

Filmographie

『タイムレス メロディ』(00)第5回釜山国際映画祭グランプリ
『波』(01)第30回ロッテルダム国際映画祭最優秀アジア映画賞
『青い車』(04)第33回ロッテルダム国際映画祭
『16 [jyu-roku]』(07)
『黒四角』(12)第25回東京国際映画祭コンペティション部門
『ホテルアイリス』(21) 第21回台湾高雄映画祭招待作品 / 第16回大阪アジアン映画祭招待作品。

Theater

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スタッフ

監督: 奥原浩志 製作: 北京谷天傳媒有限公司 長谷工作室 紅色製作有限公司 プロデューサー: 李鋭 / 奥原浩志 / 陳宏一 / 浅野博貴 / 山口誠 / 小畑真登 原作: 小川洋子(「ホテル・アイリス」幻冬舎文庫 攝影: ユー・ジンピン (余靜萍) 音響: チョウ・チェン (周震) 美術: 金勝浩一 衣装・メイク: KUMI 花井麻衣 音楽: スワペック・コバレフスキ 編集: 陳宏一 / 奥原浩志

キャスト

翻訳家: 永瀬正敏 マリ: 陸夏 (ルシア) 母親: 菜 葉 菜 男の甥: 寛 一 郎 ホテルの客: 大島葉子 父親: マー・ジーシャン (馬志翔) おばさん: パオ・ジョンファン (鮑正芳) 売店の男: リー・カンション (李康生)
日本語字幕翻訳: 奥原浩志 宣伝デザイン: 成瀬慧 (RESTA FILMS) 予告編監督: 遠山慎二 (RESTA FILMS) [2021年日本・台湾合作 | 100分 |日本語・中国語 | ビスタサイズ | 5.1ch | DCP・Blu-ray] 107年度 金門縣政府文化局補助 配給:リアリーライクフィルムズ + 長谷工作室 ©長谷工作室
2022年2月18日(金)よりロードショー 新宿ピカデリー | ヒューマントラストシネマ渋谷 | シネ・リーブル池袋

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